2006年02月26日

序章B

−帝国暦611年、秋津洲市−


「……本当にやるつもりなのか」
 『帝国』近衛軍第一近衛師団少将・伊勢崎幸繁は言った。
「ええ」
 ネールヴィア氏族軍第四軍副将軍、フィリス・スコルトはこともなげに言った。
 彼女はネールヴィアでも兵家として著名なスコルト家に生まれた。銀の髪をさっそうとなびかせ、若い兵達には目の毒であろう極めて魅力的な肉体を軍服に包んだ女性。それでいて、自分の才を鼻にかけることなく、周囲に分け隔てなく優しい暖かい女性である。
 しかし、士官学校以来の付き合いである幸繁は知っている。確かに彼女はしとやかで心優しい女性だ。だが、それは彼女の持つほんの一面に過ぎない。
 ときに、必要ならどんな事でさえやってのけるのがフィリスであった。

「お茶が入りましたよ」
 金髪の女性が、二人の間に割って入るかのように現れた。
 伊勢崎・L・ルティア。8歳年下の幸繁の新妻である。
 幸繁が大陸に出征した時に拾った少女で、21歳になった先日、ようやく想い人と祝言を挙げたのだった。
 軽いやきもち心の表明なのだろう。フィリスと目が合うといたずらっぽく舌を出して見せた。つられてフィリスも笑う。
「……」
 幸繁は肩をすくめた。
「ルティ」
「あら?なあに、あなた?」
 白々しく言うと、ルティアは体を幸繁に預けた。さすがにこれにはフィリスも眉をひそめる。
「幸繁さん、話に戻りましょう」
「ああ。ルティ、そこに座りなさい」
「はぁい……」
 ルティアは不満を隠そうともせずに椅子に座った。

 幸繁とフィリスがさっきから話していた問題。それは、知性体の電算機化である。
posted by 蒼野青 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 電算司令部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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