2006年02月27日

序章B2

 一般に人型電算機と呼ばれるそれは、生物の柔軟性と機械の緻密性を兼ね備え、単純な電算機よりもはるかに優れているとされている。
 しかしそれは遠い昔に失われた技術であり、復元には長い年月が費やされてきた。最近になってようやく実用化のめどが立ったのだが、問題は山積していた。
 最大の問題と言うのが、倫理面の問題である。
 現在の技術では人間、あるいは魔族のような知性体の肉体……有機体と電算機を組み合わせ、一から育てる手法が最も無難であると言える。だが、そうやって作られた人型電算機に基本的人権は付与されるべきなのだろうか?
 ある一派は主張した。有機体から作られた電算機は明らかに人工物であり、人間として認める必要はない、と。またある一派は主張した。人型電算機は人間の肉体を持った知性体であり、魔族同様人権は与えられるべきである。また、任務を受け入れるかどうか決める権利を与えられてしかるべきだ、と。
 そもそも全てが論外だと言う意見もあった。人が人を材料として人ならざる人を作るのは自然の倫理に反すると。

 幸繁自身は人型電算機に対してやや否定的な思考を有していた。倫理的な観念というよりはむしろ、生まれながら電算機とされた者の心情をおもんばかったのである。

「最初はネールヴィア氏族の者を素体に用いるわ」
 フィリスはそっけなく言った。ネールヴィア氏族は元々上への忠誠心が強い種族である。フィリス自身、よほど理不尽な命令でなければしたがって当然と考えているフシがあった。
「それは……」
「心配しすぎよ、幸繁君」
 フィリスは一蹴した。
「電算機と言ってもちょっと機械がついているだけの事。拒否権は与えられる予定よ。もっとも、電算機でなくなるようにする技術は実現に程遠いけれど」
posted by 蒼野青 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 電算司令部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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