2006年05月09日

帝都革命事変のこと(6)

現在我々、帝国陸軍第一近衛師団隷属ノ一部部隊ハ皇居ニテ防衛戦闘中。
我ガ方ノ現兵力ハ、二個小隊程度デ総員約八十。
小銃部隊ノ為軽機関銃以上ノ装備ハ無ク、火力・兵力共ニ圧倒サレツツアリ。
陛下ヲマズハ非常用地下脱出路ニオ連レスルモ、現状デハ帝都ヨリノ脱出ハ不可能。
至急救援ヲ請フ。
ワレ引キ続キ戦闘ヲ継続ス。
天皇陛下万歳。

陸軍司令機『武尊』は大きく息を吐き出した。
第一近衛師団に所属する彼女の唯一にして最大の任務は、今上天皇の護衛。

今さっき伝えたとおり、状況は決して芳しくない。

だが。白旗を揚げるわけには行かない。逃げ出すなどもってのほか。

ずがァァァァン!

迫撃砲の着弾。

敵はいよいよなりふり構わなくなってきたらしい。
破片をまともに受けた部下が、血まみれでうめく。

しかし、彼女達は『近衛』。

その最期の瞬間まで、『あの方』を護り抜かねばならないのだ。


「まだ天皇は捕まらんのか!?」
『日本社会主義人民共和国』書記長・葉埼は苛立っていた。
「ええい、かまわん!迫撃砲でも何でも撃ち込んでやれ!
もともと生かしておいてやる気など無い。それが早いか遅いかの違いだけだ。
あの帝国主義の生み出した偶像を、さっさと葬り去ってしまえ!
真の人民による平和世界に、最も不必要な存在に他ならん! 」

天皇を否定しながら、天皇に固執する。
彼もまた、天皇に魂を曳かれた日本人に過ぎなかったのかもしれない。

この時、彼がやるべきことは『反動勢力』の制圧であり、味方の解放軍を迎え入れる事であった。

それに、天皇は帝国主義の生み出した偶像などでは断じてない。
皮肉っぽく言えば、もっと凶悪な存在。

実権をとうの昔に失っているにも関わらず、時の権力者どもが政権を握るための『権威』であり続け、

権力者が消えては生まれる栄枯盛衰をよそに『雲の上』で超越的に存在し続ける。

その辺の事を、彼は理解していたのだろうか……
posted by 蒼野青 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 電算司令部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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